私は小さい頃、とても頑固な子供でした。
自分の思い通りにならない事があると、すぐにすねたり大泣きしたりしていました。
わがままを言うたびに母からは「地球はあんたを中心に回ってるんちゃうよ。あんたが地球の周りをまわってるんやで」と叱られたものです。
6歳頃には、小学校にある鉄棒のてっぺんまで登りたいと言って出来もしないのに周りが真っ暗になるまで鉄棒にしがみついて母を困らせたそうです。

そんな自己中心的で頑固な性格のまま中学2年生になった時に、その後の人生を左右する衝撃的な出来事がありました。

中学生になってからバイクレースに興味を持ち始め、テレビでやっていた『パリダカールラリー』の特集番組を観ました。

レースでは、2人のフランス人ライダーがデットヒートを繰り広げていました。
そして、ラリー最終日に2位のライダーがゴール手前30キロ付近で転倒してしまい、両足を複雑骨折して激痛に苦しみながらもゴールに戻ってきたのです。
彼の両足には、何本もの木の枝が突き刺さっていました。
昔からのライバルでもある1位のライダーは、寄り添って心配そうに涙ぐんでいます。
パリダカールラリー

骨折をしたライダーは、応急処置を受けて救護のヘリに運ばれる際に、インタビューに答えました。
そこで彼は、ラリーや自分のチーム関係者そしてライバルのライダーを称賛した後に「もう僕がバイクに乗る事は無いだろう」と答えます。

僕は、「こんな痛い思いしたら、そりゃ乗りたく無いやろ!」と思いながら観ていました。

ところが彼が続けた言葉は、「もう一緒に走るティエリーの後ろ姿が見れないからだ」だったのです。

ティエリーとは、パリダカールラリーの創始者であり、前年のレースでコース確認に出た際、乗っていたヘリコプターが砂嵐に巻き込まれ墜落して亡くなっていたのです。
ティエリーと、このトップ争いをしていたライダー達は古くからの友人でした。

私はこの言葉を聞いた時に、今まで感じたことのない凄い衝撃を受け
「かっこいい! 自分も彼らのような人になりたい! 彼らと同じ場所に行きたい!」と思ったのです。

なぜ、14歳の私がかっこいいと感じたか・・・
それは、そこに人を『想う』ということを感じたからでした。

自分自身の両足が折れて激痛に襲われながらも、痛みやレースをリタイヤしなければならない悔しさを口にするのでなく、ライバルのライダーやラリーに対しての想いを語り、さらに今は亡き友人の事を想っている様、
昔からの友人であり、同じライダーとして、リタイヤしなくてはならない彼の悔しさや無念さを想い涙する様、
様々な人の想いを受けてラリーを走り続けるライダーの姿、
そういった全ての人の姿に、それまでの自分ではあまり感じてこなかった『人を想う』というものを強く感じ心を揺さぶられたのです。

それからは、様々な「想う」シーンに触れるたびに心が揺さぶられてきました。
そして治療家となった今、辛い痛みや身体の不調にお困りの方を多く見てきました。
そのような方々は、家族や友人、職場の同僚や先輩後輩など周囲の大切な人のことを想い、自分のことは後回しにして大切な人の為に頑張られていました。

私は患者さまの人を『想う』気持ちに触れるたびに心が揺さぶられます。
そしてこの患者さまの想いに寄り添い、辛い痛みや身体の不調を改善さすために全力でサポートするのが私の使命だと思っています。

つつじ整骨院院長 辻喜次

(柔道整復師 辻喜次 監修)